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そもそも今、能登半島に旅行してもいいのかな?

執筆者の写真: Mikiko YanagisawaMikiko Yanagisawa

結論、能登に旅行はできます。

ぜひ行って、今の能登ならではの旅を楽しんで、今の能登を確認してください。

注意してほしいのは、どこでも行けるわけではないし、すべてきれいに整えて「来てください」というわけでもない、ということです。

でもそれをわかって能登に行けば、普通の観光旅行とはひと味違った景色に遭遇し、地元の人と深い話をし、自分の暮らしも見直す機会になると思います。

羽咋市にある、能登国一宮の氣多(けた)大社。古代から能登半島全体の安寧を守っている。地震発災翌日の1月2日から参拝を受け付け、能登の人々を勇気づけた



能登に来ないで!は生きているのか?


1月1日の発災後、すごいパワーで「来ないで」と言われた記憶が鮮明で、行ったら迷惑なんじゃないかと、尻込みしてしまいます。

実際、まだ生活道路も確保できないところ、上下水道が開通していないところもあって、用もないのに行くべきでない場所があるのは事実です。そこに行く工事関係者の邪魔になるのは、もってのほかです。

でも能登は広くて、そうでないところもたくさんあります。それも、「ここまでは」とか、「このエリアは」とか、スッパリ分けることはできなくて、地盤により、建物の構造により、2階や屋根の重さにより、工事の進捗により……隣り合っていても違いますし、時間の経過でも変わります。

そのことを知った上で、大丈夫なところを選んで行けば、以前と変わらぬor地震前にはなかった能登と出合えるかもしれません。


旅行者は歓迎される立場なの?


能登の人も、一人一人思いは違います。

地震直後から1ミリも片付いていないところもある中で、「まだ観光じゃないだろう」と思う人もいるでしょう。

その一方で、「来られるならぜひ来て、今の能登を見て、帰ったらまわりの人に話して、能登のことを忘れないでほしい」と複数の人から言われたのも事実です。

私がせつなく感じたのは、少なからず「能登が忘れ去られているんじゃないか」という不安を口にする人がいたことです。

他所から来た人が、以前のように観光ポイントをめぐっていたり、お土産を買っていたりする姿に、「ああ、戻ってきた」とホッとする人も少なくないと思います。

取材ではなく普通の世間話をした別れ際、「外から来た人と話せて、なんかスッキリした」とも言われました。考えてみると、まわりは多かれ少なかれみんな被災者。その中で、関係ない私とおしゃべりするのは違ったのかなと。 気分を変えてもらえたなら、よかったかな、とホッとしました。 だから、生活再建のお邪魔にならない範囲で能登を旅行して、お話しもしてみてください。

「能登のことをいつも思っている」という気持ちは能登の人を勇気づけられるでしょうし、きっと旅行者の側も、教えられることがたくさんあると思います。


(取材・文・写真 柳澤美樹子)

6月16日初出

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